亜鉛は髪の毛によい栄養素!亜鉛の役割や摂取時に気をつけるべきポイントを紹介

「亜鉛は髪の毛によい」といわれることがあります。しかし「本当に亜鉛は髪の毛によいのか」「なぜ亜鉛は髪の毛によいのか」と思われる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は亜鉛が髪の毛によいとされる理由や、亜鉛の働き、摂取する際のポイントなどについて紹介します。亜鉛を効率よく摂取するための食材や料理についても解説していますので、参考にしてみてください。

亜鉛が髪の毛によいといわれる理由

亜鉛は体内に広く分布している微量ミネラルです。

ミネラルのなかでも生命活動に欠かせない必須ミネラルですが、髪の毛によいといわれることがあります。

事実、亜鉛は育毛サプリに含まれることも少なくありません。亜鉛は髪の毛に対して以下のような働きをするのです。

  • ケラチンの合成を助ける
  • ヘアサイクルをサポートする

亜鉛の髪の毛に対する働き

亜鉛の髪の毛に対する働き

では、亜鉛の髪の毛に対する働きを詳しく見ていきましょう。

ケラチンの合成を助ける

髪の毛は主にケラチンと呼ばれるタンパク質から構成されています。

ケラチンは摂取したタンパク質がアミノ酸へいったん分解された後に、再合成されるのですが、その際に亜鉛が消費されます。

亜鉛が不足するとケラチンが作られにくくなり、結果として薄毛につながるケースがあります。

ケラチンについてはこちらをご覧ください。

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ヘアサイクルをサポートする

髪の毛はヘアサイクルと呼ばれる周期のなかで、毛母細胞が分裂を繰り返すことにより、作られています。

つまり、髪の毛の発育には毛母細胞が活発に分裂することが重要です。そして毛母細胞が分裂する際には、亜鉛が必要になります。

亜鉛が不足すると、毛母細胞の細胞分裂がスムーズにおこなわれなくなり、髪の毛が成長しにくくなってしまうわけです。

亜鉛に期待できる髪の毛以外への効果とは

亜鉛に期待できる髪の毛以外への効果

亜鉛は髪の毛の成長に欠かせない栄養素ですが、期待できるのは髪の毛に関する効果だけではありません。

続いて、亜鉛が髪の毛以外に期待できる効果を見ていきましょう。

成長発育のサポート

亜鉛は成長ホルモンの分泌に関係しているといわれています。特に小児では亜鉛の摂取量が足りないと発育に影響が出る可能性があります。

成長ホルモンは成人にとっても重要なホルモンです。成長ホルモンが十分に分泌されないと、骨や筋肉の代謝がうまくいかず、骨が脆くなったり筋肉量が減ったりすることがあります。

亜鉛が不足すると成長ホルモンにかかわる「インスリン様成長因子(IGF-1)」が作られにくくなってしまうのです。

インスリン様成長因子(IGF-1)は身体の成長や代謝、受精卵や精子の形成など、重要な役割を果たします。

骨・関節の健康維持

亜鉛は骨の代謝にも関係していると考えられています。

年を重ねた女性(特に閉経後の女性)が気をつけるべき疾患のひとつが、骨の強度が低下し、骨折しやすくなる「骨粗しょう症」です。

亜鉛不足と骨粗しょう症リスクとの因果関係も立証されています。

ある実験ではマウスに亜鉛欠乏食を与えると、カルシウムの代謝が遅れることがわかっています。

加齢に伴って生じることが多い関節痛の一因も亜鉛不足といわれているため、亜鉛を補給することで、関節痛の緩和効果も期待できるわけです。

味覚機能の維持

私たちは舌の「味蕾(みらい)」と呼ばれる器官で味覚を感知しています。

ひとつの味蕾細胞のなかには味を感知する「味(み)細胞」が数十個存在し、甘味や苦味といった味を感じることで「甘い」「苦い」などと知覚しているといわれています。

味細胞は絶えず入れ替わっていますが、この新陳代謝にも亜鉛が重要です。

亜鉛が不足すると新陳代謝が遅れ、味蕾細胞の機能が低下することを示す研究結果もあります。

亜鉛を摂取することにより正常な味覚機能を維持することができるといえるでしょう。

亜鉛を摂取するときのポイント

亜鉛を摂取する際のポイント

亜鉛は体内で生成できないため、体外からの摂取が欠かせません。ただし亜鉛の摂取に際しては、いくつか気をつけるべきポイントがあります。

続いて、亜鉛を摂取する際の注意点やコツなどを紹介していきます。

あわせて摂取する栄養素に気を配る

亜鉛を単独で摂取した場合の体内吸収率は30%程度と推定されています。

しかし、亜鉛の体内吸収率は、あわせて摂取する栄養素によって変わります。

単独では吸収されにくい亜鉛の恩恵を存分に享受するためには、あわせて摂取する栄養に気を配ることが大切です。

亜鉛の吸収率を高める栄養素

亜鉛の吸収率を高める栄養素には以下のようなものがあります。

  • クエン酸
  • ビタミンC
  • ビタミンA(β-カロテン)
  • 動物性タンパク質など

なかでも、保湿効果や肌の健康を維持する効果があるとされるビタミンA(β-カロテン)は、亜鉛と摂取することでその代謝が促進されると考えられています。

つまりビタミンA(β-カロテン)と亜鉛をあわせて摂取すると、相互作用でより多くの恩恵を受けることが可能です。

またタンパク質は皮膚や髪の毛を構成する栄養素ですが、亜鉛はタンパク質の働きをサポートするといわれています。

亜鉛の吸収率を下げる栄養素

一方、亜鉛の吸収率を下げる栄養素には、以下のようなものがあります。

  • フィチン酸
  • ポリリン酸
  • リン酸塩
  • カテキンなど

豆類などに含まれる「フィチン酸」は消化器管内で亜鉛と結合し、亜鉛の吸収を阻害すると考えられています。

豆類は和食に使われることが多いため、和食が好きな方は注意が必要です。

ファストフードやインスタント食品などの加工食品に含まれる「ポリリン酸」や「リン酸塩」、緑茶などに含まれるカテキンも亜鉛の吸収を阻害する可能性があります。

ただし、一般的な食生活の範囲内であれば過度に心配する必要はないでしょう。

サプリメントを活用する

亜鉛を含む食物は多いですが、日本人は潜在的な亜鉛欠乏状態である割合が高く、先進国で唯一10~30%が亜鉛欠乏状態にあると報告されています。

亜鉛が不足しがちな方はサプリメントを活用するとよいでしょう。ただしサプリメントで摂取する場合、気づかないうちに過剰摂取になってしまうことがあります。後述の摂取目安量を常に意識することが必要です。

サプリメントの活用が推奨される方

たとえば以下の方は亜鉛が不足する可能性があるため、普段の食事に亜鉛のサプリをプラスするのがおすすめです。

  • 月経のある女性・妊娠中の方
  • 日常的にスポーツをする方

月経のある女性は貧血になりやすく、亜鉛も不足する傾向にあります。
また妊娠中は、亜鉛を含むミネラル分が母体から胎児に優先的に送られるため、妊婦も亜鉛不足に注意が必要です。

また、スポーツをする方も亜鉛不足に陥りやすいといえるでしょう。
マラソン選手は貧血になりやすいと聞いたことありませんか。
足の裏に強い衝撃を繰り返し受けると、血中のヘモグロビンが壊れ「溶血性貧血」になることがあります。溶血性貧血は亜鉛不足の一因です。

スポーツによって生じる貧血を「スポーツ性貧血(運動性溶血性貧血)」と呼び、運動中に足の裏を繰り返し打ちつける長距離走やバレーボール、バスケットボールなどの選手によく見られます。こうしたスポーツを日常的におこなっている方は、特に気をつけなければなりません。

亜鉛は汗や尿とともに排出されるため、運動中の発汗によって亜鉛不足に陥ることもあります。

適切な量を摂取する

亜鉛は不足した場合も過剰摂取した場合も、体に不調をきたすことがあります。そのため適切な量を摂取することが肝心です。

厚生労働省発出の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると亜鉛の摂取目安量は以下のとおりです。

亜鉛の食事摂取基準量(㎎/日)
性別男性女性
年齢等推定平均必要量推奨量目安量耐容上限量推定平均必要量推奨量目安量耐容上限量
0~5(月)22
6~11(月)33
1~2(歳)3323
3~5(歳)3433
6~7(歳)4534
8~9(歳)5645
10~11(歳)6756
12~14(歳)91078
15~17(歳)101278
18~29(歳)911407835
30~49(歳)911457835
50~64(歳)911457835
65~74(歳)911407835
75以上(歳)910406830
妊婦(付加量) +1+2
授乳婦(付加量) +3+4

引用:厚生労働省|日本人の食事摂取基準(2020年版)

亜鉛が不足した場合に生じることのある症状

亜鉛が不足した場合、以下のような症状が生じることがあります。

  • 味覚障害
  • 骨の代謝遅延
  • 皮膚トラブル
  • 脱毛など

亜鉛不足が引きおこす症状としてよく知られているのは、「味がわからない」「本来の味と違った味を感じる」といった味覚障害です。

また亜鉛が不足すると髪の毛の主成分であるケラチンの合成がうまくいかず、薄毛につながりかねません。

亜鉛不足により、皮膚を構成するタンパク質が作られにくくなると健康な皮膚を保つことが困難になり、皮膚炎やかゆみといった皮膚トラブルのリスクも高まります。

亜鉛を過剰に摂取した場合に生じることのある症状

亜鉛を過剰に摂取した場合、以下のような症状が生じることがあります。

  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 免疫力の低下など

亜鉛そのものの毒性は高くありません。しかし、亜鉛はタンパク質の働きを助ける作用があります。

タンパク質は、必須ミネラルである銅と結合しやすい性質をもちます。

つまり亜鉛を摂取することが、間接的に銅の吸収を低下させることになるわけです。

長期間に渡って亜鉛を過剰摂取すると、吐き気や嘔吐、下痢、貧血といった銅欠乏症の症状が現れるケースがあります。

また亜鉛過剰の状態が長引けば腎臓機能が低下し、老廃物の排出が滞るようになります。

すると臓器が正常に働かなくなり、免疫力にも支障が生じるリスクもあるのです。

亜鉛が豊富な食材や料理を紹介

亜鉛が豊富な食材

最後に亜鉛が豊富な食材やおすすめの料理を紹介します。あわせて摂取すると吸収率が高まるプラスワンメニューも紹介していますので、献立の参考にしてください。

亜鉛が豊富な食材

亜鉛が豊富な食材には以下のようなものがあります。

魚介類

  • 牡蠣
  • 煮干し
  • たらこ
  • たこ
  • ほたて
  • アサリ
  • しらす干し
  • かつお節など

肉類

  • 牛もも
  • 赤身肉
  • 豚ヒレ肉
  • コンビーフなど

野菜類

  • 切り干し大根
  • パセリ
  • ほうれん草
  • えだまめ
  • しそ
  • たけのこなど

豆類

  • きなこ
  • 高野豆腐
  • 大豆
  • 納豆
  • 豆苗など

卵類

薄毛対策におすすめの栄養素についてはこちらをご覧ください。

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亜鉛を豊富に摂取できる料理

続いて、亜鉛を豊富に摂取できる料理を紹介します。

牡蠣の豚肉巻き

豚肉に含まれる動物性タンパク質は、牡蠣の亜鉛の吸収率を高めてくれます。

豚肉には皮脂分泌を正常に保つ働きがあるとされるビタミンB2やビタミンB6が豊富なため、頭皮環境の改善効果も見込めます。

パセリを添えるのがおすすめです。パセリに含まれるビタミンCには亜鉛の吸収率を高める効果が期待できます。

ホタテとたけのこの炊き込みご飯

ホタテは、マグネシウムや鉄などのミネラル分やビタミン群が豊富です。なかでもビタミンB12には毛細血管を強化し、頭皮環境を改善する効果が期待できます。

たけのこには必須アミノ酸の「チロシン」が含まれます。

チロシンは髪の毛の主成分であるケラチンを構成するアミノ酸で、抜け毛対策に重要な栄養素です。

牛ステーキ丼温泉卵のせ

牛肉には動物性タンパク質も豊富なので亜鉛を効率的に摂取できます。

動物性タンパク質のなかでも、薄毛対策に効果的なのが「メチオニン」と呼ばれる必須アミノ酸です。

メチオニンにはコレステロールを減らす作用や肝機能改善作用などが期待できます。

コレステロールが高くなると薄毛の原因となる血流悪化を招き、肝臓の働きが悪いと髪の毛の発育に必要な栄養素を十分に吸収できません。

メチオニンには間接的に薄毛への効果が期待できるわけです。

ほうれん草とアボカドサラダ

ほうれん草には亜鉛のほか、高い抗酸化作用をもつビタミンA(β-カロテン)が含まれます。

アボカドは「森のバター」とも呼ばれ、ビタミン群やミネラル類が豊富です。またオメガ9系の脂肪酸に分類される「オレイン酸」も含んでおり、保湿効果や傷んだ髪を補修する効果も見込めます。

レモンを絞るとさらによいでしょう。レモンに含まれるクエン酸が亜鉛の吸収率を高めてくれます。

豆苗とエノキの炒めもの

豆苗は亜鉛以外に、抗酸化作用があるビタミンA(β-カロテン)やビタミンC、葉酸が豊富に含まれています。

ビタミンA(β-カロテン)は油と一緒に摂取することで吸収率が高まる栄養素です。

他方で、ビタミンCや葉酸は熱に弱い性質をもちます。

亜鉛とビタミンA(β-カロテン)とビタミンC、葉酸のいずれも効率的に摂取するには、短時間で手早く炒めることが重要です。