薄毛といえば男性の悩みが連想されがちですが、女性で薄毛に悩む人も少なくありません。
薄毛治療によく使われる成分に、ミノキシジルがあります。
しかし女性がミノキシジルを使う場合、気をつけなければならない点があります。
そこで今回はミノキシジルの効果や副作用、女性が使うときの注意点などを解説していきます。
ミノキシジルとは?
ミノキシジルとは、発毛効果が認められた数少ない成分です。
新たに髪の毛を生やすためには、毛母細胞を活性化させることが必要になります。
ミノキシジルは、毛母細胞や毛乳頭を直接刺激し、細胞分裂を活性化させることで発毛を促すといわれています。発毛効果は確認されているものの、現時点ではその詳細なメカニズムはわかっていません。
ミノキシジルは当初、血圧降下剤として使用されていました。
ところが、副作用として毛髪が伸びたり、抜け毛が改善したりすることが発覚したため、育毛剤として用いられるようになったのです。
現在ではAGA(男性型脱毛症)の治療薬として広く使われています。
ミノキシジルには外用薬と内用薬があります。
ミノキシジル外用薬(通称:塗りミノ)は厚生労働省の承認を受けていて、通常育毛剤や発毛剤として使われます。
医薬品医療機器等法上の第一類医薬品に分類され、薬局や通信販売で入手できます。
内用薬のミノキシジルタブレット(通称:ミノタブ)は、国内では未承認です。
医薬品医療機器等法上の医療用医薬品に分類され、医師の処方なしには入手できません。
また内用薬については、胎児への影響のリスクなどから女性の使用は控えることが推奨されています。
女性でもミノキシジルの使用は可能?
日本皮膚科学会発出の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」によれば女性への効果が確認されています。実際近年では女性の薄毛治療にミノキシジル外用薬が用いられることも多いです。
出典:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
女性がミノキシジルを使用するときの注意点
ただし女性がミノキシジルを使用する場合、いくつか注意しなければならないことがあります
原因に合わせた対策をする
未解明の部分も多いものの、女性の薄毛にも種類があり、原因もさまざまです。そして原因が違えば自ずと効果的な対策も変わってきます。
たとえば、皮膚の過剰分泌が主な原因の脂漏(しろう)性脱毛症の対策としては、油ものを控えることが有効です。しかし髪が一方向に引っ張られることが原因の牽引(けんいん)性脱毛症は、食生活を正したところで根本的な改善には至りません。
フケによる毛穴詰まりなどが原因の粃糠(ひこう)性脱毛症の場合、低刺激性のシャンプーを使えば改善が期待できます。他方ホルモンバランスの乱れが主な原因の分娩後脱毛症はシャンプーを変えても治らないでしょう。
現在のところ、ミノキシジルの有効性は、男性型脱毛症だけでなく、女性型脱毛症に対しても確認されています。
不要に副作用リスクを負うことになりますから、ほかの脱毛症の対策には使わないようにしてください。
妊娠の可能性がある場合は使用しない
ミノキシジルは、強い血管拡張作用をもちます。 そのため心臓への負担も大きく、妊婦(妊娠の可能性がある場合も含む)が使用すれば胎児に影響が出るリスクがあります。絶対に使用しないようにしてください。
用法・用量を厳守する
ミノキシジルは使用量に比例して効果があがるものではありません。説明書をよく読んで必ず用法・用量を守りましょう。どうしても増減したい場合には、自己判断せず医師に相談することが大切です。
ミノキシジルの副作用・禁忌事項
ミノキシジルは細胞に直接働きかける強力な成分です。発毛効果が期待できる反面、稀に副作用が現れることがあるため、取り扱いには注意を要します。そこで次に、ミノキシジルの副作用と禁忌について確認しておきましょう。
副作用
まずはミノキシジルの主な副作用について解説します。
初期脱毛
ミノキシジルを使用しはじめて間もなく、脱毛症状が現れることがあります。
これを「初期脱毛」といい、悪いヘアサイクルを一旦リセットする過程で起こる症状です。
症状は、使用開始後3週間~1カ月ごろから現れはじめ、通常3カ月程度でおさまるので心配はいりません。
人によっては、服用開始後半年を経過したころに「二次脱毛」と呼ばれる2回目の脱毛期が訪れるケースもあります。
いずれにしても、ミノキシジルの使用後の脱毛症状は効果の裏返しです。脱毛に驚いて使用を中断しないようにしましょう。
多毛症
多毛症とは全身の毛が太く、硬くなることです。
ミノキシジルは毛母細胞や毛乳頭に働きかける発毛を促進しますが、その作用が頭部以外にも影響することがあるのです。
女性の場合は、顔のうぶ毛や眉毛が濃くなることがあります。また、知っておきたいのが脱毛の施術をした箇所からも毛が生えてくる可能性がある点です。どうしても気になるようなら、別の薄毛対策を検討してもよいかもしれません。
頭皮の炎症・かゆみ、かぶれ
外用薬の使用で頭皮に炎症や発疹、かゆみなどが生じるケースがあります。肌に合わないと感じたら医師に相談しましょう。
頭痛や倦怠感、めまい、動悸など
血管拡張作用のあるミノキシジルを使うと血圧が下がります。
すると血圧低下に起因した頭痛やめまい、倦怠感、動悸が起こるケースもあります。これらの症状が現れた場合、医師に相談の上、使用継続の可否を判断してもらいましょう。
禁忌
次にミノキシジルの禁忌について解説します。
女性による男性用ミノキシジルの使用
ミノキシジル外用薬は、性別によってミノキシジル推奨配合量が異なります。
「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」では男性は5%、女性は1%のものを使用することが推奨されています。
ミノキシジルの濃度が高いと、その分副作用リスクも高まります。
とくに女性は重大な副作用につながることもあるので、例えばパートナーのものを使うといったことはしないようにしてください。
また内用薬については、女性の使用は控えることが推奨されています。
妊娠中および授乳中の使用
強い血管拡張作用をもつミノキシジルは、心臓への負担も大きいです。そのため妊娠の可能性がある方が使用すれば、胎児に影響が出るリスクがあります。
またミノキシジルは母乳中に移行するので、授乳中も使用は避けなければなりません。
未成年や高齢者、ミノキシジルアレルギーのある人の使用
内外用問わず、ミノキシジルを使用できるのは20~65歳のミノキシジルにアレルギーがない人のみとなっています。
併用禁忌
ミノキシジル内用薬は
- 偏頭痛治療薬(イミグラン)
- 風邪薬(イブプロフェン)
と併用してはいけません。
そもそも女性の内用薬の使用はNGですがイブプロフェンは、生理痛止めや解熱鎮痛剤としても広く流通しているので要注意です。
アルコールの摂取
アルコールには血行を促す働きがあります。
ミノキシジルと併用すると、ミノキシジルの血管拡張作用との相乗作用で体にかかる負荷が大きくなり、健康に悪影響を及ぼすリスクが高まります。
内外用にかかわらず、ミノキシジルを使用している期間はアルコールの摂取は控えめにしましょう。
ミノキシジルの使い方・効果を高めるためのコツ
ミノキシジルは使い方によって得られる効果に差が出ます。そこで次にミノキシジルの効果的な使い方を紹介します。
使い方
外用薬は次の流れで使うと効果的です。
外用薬にはノズルタイプやスプレータイプなど種類がありますが、ここではプッシュタイプ(頭皮に塗り込むタイプ)を例に解説します。
STEP1:頭皮の汚れを落とす
頭皮が汚れていては、成分がうまく浸透しません。事前にシャンプーをして皮脂や汚れを落とすことが重要です。
STEP2:乾かす
洗い終えたら髪の毛を乾かします。髪へダメージを与えるドライヤーの時間を短くするため、先にタオルドライで水分を取り除いておくのがおすすめです。
ドライヤーでは乾かし過ぎないようにしましょう。頭皮が乾燥しすぎると、育毛剤が浸透しにくくなります。
STEP3:塗布する
気になる箇所に塗布します。地肌に直接成分を届けるため、クシや手で分け目をつける(ブロッキング)のがポイントです。
STEP4:頭皮マッサージ
血流を促し、頭皮全体に成分が行きわたるよう頭皮マッサージをします。
使用のタイミング
外用薬を使用するタイミングは入浴後がおすすめです。
入浴後は毛穴も開いていますし、毛穴の汚れも落ちているため成分が浸透しやすくなっているからです。朝と晩の2回使用するのがよいとされていますが、製品によって異なる場合がありますので、説明書を確認しましょう。
4ヶ月は継続して使用する
ミノキシジル製剤の有効性が認められているのは、4カ月継続使用後からです。
効果が実感できないからと使用を中断しないようにしましょう。
ミノキシジルについてのQ&A
大丈夫です。
内用薬に関してはクリニックで入手するしかありませんが、外用薬はドラッグストアなどで購入できます。ただしミノキシジルは強い成分です。
- 心疾患がある
- 甲状腺機能障害(甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症)を患っている
- 高血圧・低血圧で現在治療を受けている
といった方は、必ず医師に相談の上使用しなければなりません。
持病がない方でも、体質や体調によってはなんらかの不調をきたす可能性はあります。
安全に薄毛対策をしたいなら、クリニックで処方してもらうのがおすすめです。
お伝えしたとおり、男女とも副作用はあります。ただ禁忌は女性特有のものが多いです。授乳中に使用すれば、母乳を通して子どもに影響が及ぶリスクがあります。また、妊娠中に使用すれば胎児に異常をきたしかねません。
ミノキシジルの使用には細心の注意が必要です。
基本的には皮膚科で問題ありません。
ただし皮膚科では男性に対しても、内用薬しか処方していない場合があります。
外用薬がほしいなら、専門のクリニックを受診しましょう。「AGA治療」「薄毛治療」などの表示を掲げている病院がそれにあたります。
オンライン診療が可能なクリニックもありますが、対面でないと症状が正確に伝わりにくくなるかもしれません。可能であれば病院で受診するのがおすすめです。
今は女性の薄毛も一般化していることから、女性専用のクリニックもあります。男性がいないので、気兼ねなく相談できます。